温井集落 樋口一郎さん
鍋倉山の麓にある温井集落で生まれ育った樋口さん。お話しを聞く中で印象的だったのが、鍋倉山は「ろくでなしの山」という一言。全国的に見ても屈指の積雪量を誇る関田山麓の冬を指して集落の方が言った言葉だそうです。言葉通りにとると、鍋倉山は麓に雪を降らせるだけの存在のように思えますが、その森を形成するブナの保水力は麓の集落や平野部に欠かせない存在です。江戸時代に作られた関田峠近くの茶屋池を水源とする「平用水」(平堰)は当時天領であった常盤平(現在の飯山市常盤地区)の米作りにおける水不足を解消するために造られました。また、昭和後期にはスキー場開発や営林署による鍋倉山の国有林の伐採計画が持ち上がりましたが、ブナの持つ保水力の大切さを知っていた住民や関心ある人々によって反対運動が起き、計画は中止となりました。もし、その時に中止とならなかったら今の環境はなかっただろうと樋口さんは思い返します。